とはいへ、そのやうな労務のかたはら、凡そ精神病院の入院患者ほど、自家の職業を病院内へ持越して、常に不断の修養につとめてゐる者はないのである。
或る者はすでに一万二千枚の長篇小説を書きなほ執筆をつづけてゐるが、一万二千枚ともなれば机上に積まれた分量自体がすでに充分瞠目に価するもので、作者はことさら分量の大に恬然たる風を装つてゐるが、過度に恬然としたがる風があるものだから、却つて分量の大のみ専一に狙つてゐるのではないかと疑ふ気持になる程だ。
とはいへ、分量の大のみ専一に狙ふにしても一万二千枚ともなれば、充分敬服に価するものである。