或る者はすでに一万二千枚の長篇小説を書きなほ執筆をつづけてゐるが、一万二千枚ともなれば机上に積まれた分量自体がすでに充分瞠目に価するもので、作者はことさら分量の大に恬然たる風を装つてゐるが、過度に恬然としたがる風があるものだから、却つて分量の大のみ専一に狙つてゐるのではないかと疑ふ気持になる程だ。
とはいへ、分量の大のみ専一に狙ふにしても一万二千枚ともなれば、充分敬服に価するものである。
一般に精神病院の入院患者は自発的に宗教に親しみ、仏教たるとキリスト教たるとを問はず、各なにがしの意見を所有してゐるのが普通であるが、彼等が教理に就いて所信を吐露し論じ合ふ時ほど彼等の姿に品格と光輝を与へるものは先づすくない。