ところで、然らば自分はだうかと言ふと、自分は専門学校で国文学を学んだが、当時就職難であつたため、ある私設鉄道の従業員となり、零細な日給で働いてゐるうちに、やがて患者としてこの病院へ送られてきたもので、当年三十三才、すでに病院生活は足掛六年である。
自分がなぜこの病院へ送られて来たかといふと、当時自分は東京近郊の小さい駅の改札をやつてゐたが、改札掛といふものは専ら客の手と切符のみ見てゐる職業のやうではあるが、案外乗客の顔も一々見てゐるものなのである。
然るに自分はある時自分の特異な能力を発見した。