この時の乗客は四十がらみの極めて貧相な洋服男で、恐らく銀座の雑踏で再会しても一目で見分けがつくと思ふが、南洋系の縮毛にユダヤ系の鷲鼻をもち眼付は狡猾で手足の相は猿猴めき好色無恥であつた。
自分はこの男の爬虫類の頭部めいた指頭から甚だ好ましからぬ思ひと共に切符を受取るに際して、ここに図らざる宿命の指令を読んだ。
即ちそれはお前の一生を決する時が近づいたと予告してをり、朝の予告とつながる関係が物語られてゐるうへに、自分の浮沈がそこに賭けられてゐることを明確に示したものであつたのである。
この時の乗客は四十がらみの極めて貧相な洋服男で、恐らく銀座の雑踏で再会しても一目で見分けがつくと思ふが、南洋系の縮毛にユダヤ系の鷲鼻をもち眼付は狡猾で手足の相は猿猴めき好色無恥であつた。
自分はこの男の爬虫類の頭部めいた指頭から甚だ好ましからぬ思ひと共に切符を受取るに際して、ここに図らざる宿命の指令を読んだ。
即ちそれはお前の一生を決する時が近づいたと予告してをり、朝の予告とつながる関係が物語られてゐるうへに、自分の浮沈がそこに賭けられてゐることを明確に示したものであつたのである。