然るところ、数日前、正確に申上げれば×月×日のことであるが、はからずも自分は重大な霊感を得て、ここに再び一代の浮沈を決する大事の秋が近づいたことの予告を受けた。
即ち×月×日の夕刻のことであつたが、自分はそのとき毎日の習慣通り封筒貼をやりながら、ふと顔をあげて鉄格子の外を眺めたのである。
そこは病院の裏庭であつたが、こんなところは庭掃除の小使かオチャッピーの看護婦共がキャッチボールでもする時でなければ殆んど人影のない筈の所で、どこへ通ふ通路にも当らないから、まして此処を急いで通らねばならないわけは一向なささうな場所であるのに、今しも一人の若い医者が散歩といふには忙しすぎる足どりで、せつせと横切つて行くのである。