そこは病院の裏庭であつたが、こんなところは庭掃除の小使かオチャッピーの看護婦共がキャッチボールでもする時でなければ殆んど人影のない筈の所で、どこへ通ふ通路にも当らないから、まして此処を急いで通らねばならないわけは一向なささうな場所であるのに、今しも一人の若い医者が散歩といふには忙しすぎる足どりで、せつせと横切つて行くのである。
オヤ/\あれはたしか内科のなにがしさんだなと分つたが、と、それと同時に、自分は首を突延すだけでは足らなくなつて、思はず立上つてゐたのである。
といふのは、この年若いお医者さんはそんなこととは一向知らずせか/\と自分の視界から歩き去らうとしてゐるのに、彼の霊気は慌ただしく頻りに何事か自分に向つて叫んでゐる。