然らば自分の外出がどのやうにして行はれるかと言へば、概ね夜の十時過ぎ、十一時前後、全病院がまつたく寝静つた後に於て行はれるのが通例で、理由の第一は自分が患者であるためよりも、看護人の夜間無断外出が既に抑々規則を犯すものであるからに外ならない。
而して、かかる深夜の外出で、自分に許された享楽が何物であるかと言へば、自分等は草深い田舎の道、特に畑の細い径を近道して、町はづれの、但し自分等の側から言へば町の入口のおでん屋で十銭の泡盛を飲むことなのである。
さて霊感に対処すべくあれこれ手段をねつてみたが、鉄格子に幽閉された身の上では全くもつてだうすることも出来ない。