正午頃十四五人の男女が訪ねてきたが、常の見物人とは何やら様子が変つてゐるので、プチジャン神父は彼等を堂内へ伴ひ入れ、ひそかに彼等の様子を見てゐると、彼等はマリヤの像を認め、あゝ、サンタマリヤと口々に叫ぶや跪いて祈念の姿勢をするではないか。
さてこそ三百年の禁令をくゞりぬけた切支丹の子孫であつたかとプチジャンは狂喜し、いづこの人々であるかと問へば、長崎郊外浦上の者で、浦上村は村民すべてが三百年今尚ひそかに切支丹を奉じてゐると答へた。
折から、他の見物の人がやつて来たので、彼等はつと神父の旁を離れ、見物人のやうな顔して彼方此方を眺めはじめた。