その晩は尾崎士郎の家へ一泊し、翌日、竹村書房の大江もそこへ来てくれて、送別の宴をはらうといふわけで、尾崎さん夫妻が、大江と僕を両国橋の袂の猪を食はせる家へ案内してくれた。
自動車が東京駅の前を走る時、警戒の憲兵が物々しかつた。
君が京都から帰る頃は、この辺の景色も全然変つてゐるだらう、と、尾崎士郎が感慨をこめて言つたが、昭和十二年早春。
その晩は尾崎士郎の家へ一泊し、翌日、竹村書房の大江もそこへ来てくれて、送別の宴をはらうといふわけで、尾崎さん夫妻が、大江と僕を両国橋の袂の猪を食はせる家へ案内してくれた。
自動車が東京駅の前を走る時、警戒の憲兵が物々しかつた。
君が京都から帰る頃は、この辺の景色も全然変つてゐるだらう、と、尾崎士郎が感慨をこめて言つたが、昭和十二年早春。