微塵も人に見せるための芝居ではなく、一人娘の家出の暗さが歴々漂ふ風景であつた。
――ところが、それですら、僕には矢張り一人の家族が脱け落ちた大きな空虚と寂寥を泌々同感することが出来なかつた。
この食堂の親爺夫婦が正真正銘の夫婦であるといふことを信じる迄には相当の時間が必要であつた。
微塵も人に見せるための芝居ではなく、一人娘の家出の暗さが歴々漂ふ風景であつた。
――ところが、それですら、僕には矢張り一人の家族が脱け落ちた大きな空虚と寂寥を泌々同感することが出来なかつた。
この食堂の親爺夫婦が正真正銘の夫婦であるといふことを信じる迄には相当の時間が必要であつた。