アカギ鯛を見るに及んで、俄に大井夫人の依頼を思ひだし、生きた魚が手にはいらぬかと訊ねてみると、小田原では無理だが、国府津か二の宮なら金の脇差だといふ返事、ガランドウは翌日の仕事の予定を変更して、二の宮の医者の看板を塗ることゝなり、僕と同行して、魚を探してくれることにきめる。
さうなると、ドテラをぶらさげて東海道を歩くわけには行かないので、ドテラの方は、又、この次といふことになつた。
何のために小田原へ来たのだか、分らなくなつてしまつたけれども、かういふ本末顛倒は僕の歩く先々にしよつ中有ることで、仕方がない。