切支丹は抵抗してはいけない掟であるから、捕吏に取囲まれたとき、わざ/\大小を鞘ぐるみ抜きとつて遠方へ投げすてゝ捕縄されたなどゝいふ御念の入つた武士があり、かういふものを読むと、その愚直さにいたましい思ひをよせられ、やりきれない思ひになる。
然し、彼等の堂々たる死に方には実際感動すべきものがあるのであつて、始めのころは斬首や磔であつたが、その立派な死に方に感動して首斬りの役人まで却つて切支丹になる者がある始末、そこで火炙りを用ひるやうになり、それも直接火をかけず、一間ぐらゐ離れた所から灸るやうにし、縄目をわざと弛めておいた。
といふのは、彼等が見苦しく逃げ廻つたりすることの出来る余地を与へるわけで、見物にまぎれて刑場をとりまいてゐる信徒達に彼等の敬愛する先輩達の見苦しく取りみだした様をみせつけて改宗をうながすよすがにするためであつた。