僕は時局的な小説などは決して書く気持ちがなく、さういふ僕に人々は時局認識がないなどゝ言ふかも知れぬが、然し、僕は何を書いても決して間違ひがないといふ大いなる自信をもつてゐるのだ。
なぜなら僕の本性に理知を超えて根を張つた祖国愛とか日本的性格といふものは目覚ましく強力で、文学といふものは、決してその本性を偽ることの出来ないものであるから、だから僕が真に誠実に文学に精進する限り、僕が何を書いても決して祖国の人々をあやまらしめるものを書く気づかひはないといふ自信を持つてゐるわけだ。
作家の中には支那事変以来小説が書きにくゝなつたと言ふ人もあるが、僕はあんまりさういふことを気にかけてゐない。