日本は温泉の国で、湯泉場にドンチャン騒ぎは附き物であるが、ローマ風呂の豪奢の片鱗をとどめるほどの浴室もなく、大半は奥の細道の心境を旨とするかの如き質実剛健ぶりで、亡国の相に縁遠いのは大慶の至りである。
銀座に東京温泉なるものが開店する由であるが、江戸時代の大衆浴場を鉄筋コンクリートにした程度のものらしく、一パイ飲み屋が社交喫茶だのキャバレーなどと現代風を呈している以上は、浴場にこの程度の現代風が現れるのは遅きに失したぐらい、酒と女と風呂は暴君にも庶民にも三位一体の快楽をなしていた。
私は沐浴が好きである。