“能筆ジム”の奥方は、自分の亭主が逮捕されるなんてトンデモ・ハップン、あの人は立派な亭主で、思いやりのある父親で、悪いことをするなんて思いもよらぬことでござんすと、言いはったとか。
それもその筈で、この奥方は御自分の亭主が、彼女が自慢に思っていた芸術家としての才能を、犯罪行為に用いていたなどとは、夢にも考えていなかったのだ。
亭主が二階にあがり、スタジオに当てられた部屋に入って、戸をぴったり閉ざしているときなど、彼女は亭主は画を描き、でなければ読書三昧にふけっているものとばかり考え、不思議には思わなかった。