伊勢の国、宇治山田といえば、大神宮、天皇家の祖神を祭る霊地であり、天皇家に深く又古いツナガリのある独特のものが民家の中にもひそんでいようと思われるのが当然なのである。
ところが実情はそうではなくて、天皇家の日本支配以前のものに相違ない原始宗教めくものが、他の土地よりもむしろ根強く残り、すでにその意味は失われているが、形態だけは伝承されている。
民家が魔除けに門にはるのは大神宮のお守りではなくて蘇民将来子孫の護符であるし、明らかにこの土地の豪族であり、しかも最初に朝廷へ帰順し道案内の功績をのこした猿田彦は、朝廷の敵であった豪族が諸国に多くの大神社に祀られて多大の民間信仰をうけた形跡を残しているにひきかえて、その郷土に於てすらも、さしたる神様ではないのである。