猿田彦も天のヤチマタに立ち、顔を合せる天孫族が目をあけることができなかったというあたりは実にサッソウたる武者ぶりであるが、これぐらい竜頭蛇尾、威厳を失うこと甚しい神様というものは他に類がないようだ。
せッせと忠義をつくしながら、不忠であり敵であった者が主人の親類に祭りあげられるにひきかえて自分はピエロにされるという、こういう定めの人間はいつの時代にもいるのである。
伊勢は天孫族の祖神を祀る霊地であるというよりも、征服者と被征服者の暗黙のカットウを生々しくはらみ、一脈今日の世界に通じる悲劇発祥の地、人間の悲しい定めの一ツを現実に結実した史地と見ては不可であろうか。