鮓久で私たちの接待に当った老女中は海女村の出身で、その半生を転々と各地の旅館の女中で暮してきたという大奥の局のような落ちつき払った人物であった。
四月から十月までが海女の働くシーズンで、冬には四五人ずつ集団をくみ旅館の女中などに稼ぎにでるのが多いそうだが、彼女らの団結心たるや猛烈で、一人が事を起したあげく、未だ帰るべき時期でもないのに帰郷すると云いだすと、他の全員も必ずそれに殉じて同時に帰郷し、あたかも雁の如くに列を離れる者がないそうである。
「なんであんなに団結心が堅いのやら、わからんですわ」