清水というものも、甚しく乏しい量で、後ダイゴ天皇の御製に、枕の下に水くぐる音、とあるが、なるほど吉水院の門前の家には竹のトヨで山腹から清水をひいてチョロ/\流れているのを現に用いているけれども、その清水の溜り水が深く濁りよどんで臭気があるほど流れている水量はチョロ/\にすぎない。
吉野の宿屋はこの吉水院と同じように深い谷の上に一列に並んでいるが深夜になっても私の枕の下は水の音がくぐらなかったね。
恐らく雨がふれば、眼下の谷に水流の音がトウトウと鳴るのであろうが、お天気の日は枕の下はほとんど水音はないね。