しづの姉婿、加藤律治氏は杉並でクリーニング店を営み、しづは同所に居住している関係上、羽山はしばらく同所でしづと同棲、仕事を手伝ってもらいたいと懇請され、長年の得意をすてゝ、その言に従った。
挙式後、同夜は一回、夫婦の行事があったが、その翌日よりは、いかなるわけか、しづは羽山とは言葉を交えず、三晩後、しづは板の間でジュウタンをしき別に床をとって独寝し、羽山は重大な侮辱をうけた。
羽山はしづの真意を解するに苦しむも、誠心誠意をもって、時には媚態を呈し、種々話しかけたが、しづは口をとざし、頑として答えなかった。