今年の一月『職を探して来るから』といって出たまゝ消息がなく私は途方に暮れているところでした。
その夫が今は井ノ頭病院に一切の過去を失っているというのですから、私は義兄と義姉=夫の姉静子(二九)=と長女と四人で取る物も取りあえず廿四日病院にかけつけました。
主治医の曾根博士は私達から一通りの話を聞き終ったあと『ネクタイの裏にコタカ、ズボン下にトクサワとありますが本人に間違いないようです』といわれ姉と私を待たせ、暫くすると看護服を脱いで色とり/″\の私服姿をした五人の看護婦さんの間に私たちを交えてしまいました。