定まる住所のない両名が前もって米を盗むと隠し場所にも窮するから、結局当日盗みだしてきて直ちに処分するのが自然であるが、日中盗むわけにはいかないし、宵のうちもまたこまる。
また、同じ村の農家だと足がつき易いと見てか、両名が盗んだのは隣村の農家からで、その距離は分りませんけれども、これを持参の袋に詰めかえて被害者宅へ運んできたら深夜の二時になったとしてもフシギではなく、それで話の筋は通っているのではないでしょうか。
だいたい浮浪者で窃盗常習者の両名と、そういう人間と承知で取引きしているヤミ屋との取引ですから、普通人の常識や生活に当てはめて訪問の時間が妙だというのは、むしろ彼らの生活の真相を見あやまるばかりで、彼らの供述が世間の常識に反していても彼らの特殊な流儀に於てツジツマが合っていた方が、むしろ嘘がなくてホンモノの供述であるらしいという考え方も成り立つだろうと思います。