しかし、それが絶対の宿命というように考えられ、まるで日本の神話のように、伝説ではなくて事実よりももっと厳粛な天理であるというように考えられると、その天理をいただく軍人指導者とただの庶民との距りと同じものが必ず生れてくるものです。
神がかりの軍人指導者は一億一心ときめこんでいますから、弱い庶民は表面はそれに逆らえず、彼我の距りを隠してついて行く以外に仕方がないようなものだ。
菊乃さんの場合は、自分の方から十七年間云々の伝説をきりだした以上、戦争時代の庶民以上に間の悪いハメで、かかる菊乃にめぐりあうのも先妻節子のみちびきであろう、なぞと先生の説が飛躍しても、一言もない。