「いかがですか、うまいですか」「ハ、ちょっと痛いです」というような会話の発生しうる場合は、カニミソのほかにはめったに考えられないばかりでなく、カニミソにおいては、そういう会話の発生するのが当然なのだから凄味がある。
しかし、この二ツの珍妙な食べ物は、いかにも愛嬌があって食べてみると、バカバカしかったり、痛かったりするだけだけれども、そのもたらす余韻というものは、たのしく、また、なつかしい。
一ツはいかにも手がこんで、文明開化の如くだけれども、腹の中で自然にまとまるものを先に慌てて作ったオモムキであるし、一ツは野蛮そのものの如くであるが、実はむしろカニそのものに噛みつくよりも一歩料理に近づいているのかも知れない。