このとき呉清源必勝の局面が打ち掛けになったとき、坊門の棋士が総勢集まって研究し、前田六段(当時)がついに起死回生の名手を発見し、そのために碁がひっくり返って本因坊の二目勝になったという秘史があるからなのである。
本因坊戦にはこういう因縁があるから、呉清源が要心深く対局者の門外不出絶対カンヅメを厳重に申出たのはモットモなことでもあった。
ついでに観戦記者の私までがカンヅメになる必要はなさそうなものだが、私は一歩門外にでると、銀座へ消えるか、新宿へ消えるか、消えたが最後二、三日は行方不明という悪癖があって、碁の因縁とは関係のない理由によってカンキン状態にされてしまったのである。