本因坊戦にはこういう因縁があるから、呉清源が要心深く対局者の門外不出絶対カンヅメを厳重に申出たのはモットモなことでもあった。
ついでに観戦記者の私までがカンヅメになる必要はなさそうなものだが、私は一歩門外にでると、銀座へ消えるか、新宿へ消えるか、消えたが最後二、三日は行方不明という悪癖があって、碁の因縁とは関係のない理由によってカンキン状態にされてしまったのである。
さて対局前夜の七時までに三人が集まって、一しょに仲よく夕食を共にすることになっていたのに、岩本本因坊と私が時間通り到着して、七時になり、腹ペコの状態で八時まで待っても呉清源が現れない。