上京中の費用一切と帰りの切符は新聞社がもってくれるから、その三百円もいらないようなものかも知れないが、月々大枚の対局料と専属料をもらっている呉清源が自分で自由になる金といえば上京のたびに下げ渡される三百円だけで、他は手をつけずに神サマに捧呈しなければならない。
その呉清源がこのたび本因坊と天下分け目の決戦をするというのでジコーサマが一族全員ひきつれて応援に上京したというのだ。
とはいえ、これはどうやら口実で、北の涯も住みにくくなったので、呉清源が天下分け目の大勝負を機に引き払って呉清源にオンブに来たのだろうと消息通は云っていた。