しかし、本因坊の当惑顔がいかにも受けた打撃が深刻らしく甚だ印象的であったから、先手後手だけのことでこれほど心が動くようでは本因坊が危いのではないか、ということが何より先に感じられてならなかった。
それというのも、その当惑顔が白番に当ったためではなく、そのアベコベだということがどうしても私の胸にひッかかるからであったろう。
黒番に当ったための気持の上の不利ということも分るけれども、白番に当ったための事実上の不利の方が精神上だけの不利よりも確実な不利であるから、どっちに当ったにしても、これほど深い当惑顔をしなければならない本因坊にバランスを失した弱点があるように感じられて仕方がなかったのである。