云うまでもなく二人の仲が悪いから、酔っ払って事が起きては面倒だというので、木村が南正面なら升田は東正面に当る位置に、間に数名の人をはさんで遠く離れているばかりでなく、顔を見合うこともできないような位置に二人の席を定めておいた。
いかにもキメのこまかい行き届いた神経のようであるが、ここがまた案外ゲリラ神経というのかも知れない。
ゲリラや野武士が一番心配するのは酒席の喧嘩やそこから発した果し合いなぞかも知れず、紳士のタシナミにしてはいささか神経の行き届きすぎたウラミがあって、こういうところがいま考えると愛嬌あふれ、おかしくて仕様がない。