この土地では飯干にコーロギという変った姓が多く、高天原伝説地の中にただ一ツ「コーロギ」という高天原説話に無関係らしい聖地のまじっているのが異様であるが、これが里人古来の聖地に当るのかも知れない。
ともかく天孫降臨の伝説の地に行って見いだすものは、八紘一宇の塔なぞとはおよそちがった大らかな平和郷と荒々しい熊襲や武神たちとは類のちがった温和で素直な住民たちとである。
高天原伝説を史実に合せた窮屈さはここでも充満している如くであり、また事実その不合理も充満しているのであるが、その基盤をなしている里人の生活というものには窮屈も不合理も見ることができない。