こんな下らない原稿ばかりで雑誌をだすのは厭だと言いだすのは葛巻で、いいじゃないか、人の原稿は下らなくても、自分だけ立派な仕事をすればよい、同人雑誌はそういう性質のものだと言って、年中二人で口論する、葛巻は文学的名門に生育した人であるから、自分が編輯にたずさわる以上くだらぬ原稿はのせられぬという誇りを放すことができぬ。
もう印刷所へ原稿が廻してあり、校正がでている最中にすねはじめて、あしたまでに何か書いて頂戴よ、とか、之を飜訳して頂戴よ、とか、じゃ君自身書きたまえ、ウン僕も書くけどさ、弱々しく笑いだされると仕方がないので、二人でよく徹夜して原稿を書いた。
葛巻という人は、こういう時に、たった一夜で百何十枚という小説を書く、破りすてて結局一作も発表はしなかったが、実際一夜に百枚二百枚という信じられない書き方をする。