尤も、一冊の本ではあるが、有閑マダムの豪華本であるから、全訳して三十枚ぐらいのもの。
何分僕は大してフランス語はできないところへ、一晩という時間であるから、辞書をひかぬ、分らぬところは面倒くさい飛ばしてしまえ、というわけで、諸所に五行ぐらいずつ飛ばしたところもある始末で、「プルウストの思い出」でも、プルウストの好きな献立の半分ぐらい料理の名前や原料に知らない言葉がでてきたので、此奴面倒と飛ばしてしまった。
無責任なことをしたもので、僕の飜訳を読んだ人はプルウストという男は随分皿数の少い宴会をひらく奴だと思いこんだであろう。