何分僕は大してフランス語はできないところへ、一晩という時間であるから、辞書をひかぬ、分らぬところは面倒くさい飛ばしてしまえ、というわけで、諸所に五行ぐらいずつ飛ばしたところもある始末で、「プルウストの思い出」でも、プルウストの好きな献立の半分ぐらい料理の名前や原料に知らない言葉がでてきたので、此奴面倒と飛ばしてしまった。
無責任なことをしたもので、僕の飜訳を読んだ人はプルウストという男は随分皿数の少い宴会をひらく奴だと思いこんだであろう。
ヴァレリイの「ヴァリエテ」などの幾つかもこうして飜訳したものだから、分らぬところはみんな抜かす、結局あの晦渋な原文が、僕の手にかかると明快至極なものになり、原文を知らない人々が讃嘆したものであるが、分らぬ所を抜くのだから明快流麗、無茶な話であった。