父の伝記の中で、私の父が十八歳で新潟取引所の理事の時、十九歳で新潟新聞の主筆であった尾崎咢堂が父のことを語っている話があり、私の父は咢堂の知る新潟人のうち酔っ払って女に狎れない唯一の人間だったそうだが、それにつけたして「然し裏面のことはどうだか知らない」と咢堂は特につけたしているのである。
咢堂という人は何事につけても特にこういう注釈づきの見方をつけたさずにいられぬ人で、その点政治家よりも文学者により近い人だ。
見方が万事人間的、人性的なので、それを特につけたして言い加えずにいられぬという気質がある。