その借金や子供の学費が気にかかることに於て彼は決して女房以下ではないのだけれども、友だちに会う、懐中の原稿料は無事女房に渡してやりたいけれども、先刻も話した通りこのお金には脚があって慌てて走って行きたがっているのだから、せつない。
まア一杯だけと思う、よく酔える、二杯、三杯、十杯、さア、景気よく騒ごう、あれも呼べ、これも呼べ、八方に電話をかける、後輩どもをよびあつめ、大威張り、陸上競技の投げ槍などを買いもとめてバルヂンという彼の作中人物の愛吟を高らかに誦しつつアテナイの市民、アテナイの選手を気どって我が家に帰る。
もはや一文の金も懐中にはない。