こんなことは女房に言えた義理ではないから、いかにも彼が大もてで、マダム意中の人の如くに威張りかえっているけれども、女房よゆるせ、そぞろ悲しく、ここが芸術の有難さだと、わが本性に根の一つもない夢幻の物語に浮身をやつし、作中人物になりすまし、朗吟の果には涙をながして自分一人感動している。
女房にこれぐらい馬鹿馬鹿しく見えるものはない。
彼女は亭主の小説などもはや三文の値もつけられない。
こんなことは女房に言えた義理ではないから、いかにも彼が大もてで、マダム意中の人の如くに威張りかえっているけれども、女房よゆるせ、そぞろ悲しく、ここが芸術の有難さだと、わが本性に根の一つもない夢幻の物語に浮身をやつし、作中人物になりすまし、朗吟の果には涙をながして自分一人感動している。
女房にこれぐらい馬鹿馬鹿しく見えるものはない。
彼女は亭主の小説などもはや三文の値もつけられない。