亡夫の遺産は年端もゆかぬ庄吉がみるみる使い果し家屋敷は借金のカタにとりたてられ、執達吏はくる、御当人は逃げだして文学少女とママゴトみたいな生活して、原稿は売れず、酒屋米屋家賃に追われて、逃げ廻り、居候、転々八方うろつき廻り、子供が病気だのと金をせびりにくる、彼女は長年の訓導生活で万金のヘソクリがあるからそれを見こんで庄吉が騙しにくるのだけれども、もう鐚一文やらないことにしている。
下宿を追われ、どこかの居候もいにくくなると、小田原へ逃げのびてきて糊口をしのぎ、原稿をかいてどこかの部屋をかりる当がつくとサッサと飛びだすという習慣、恩愛の情など微塵もなく、ただもうヤッカイ千万な奴だと思っている。
然しそのとき庄吉には都落ちを慰めてくれる非常に大きな希望があった。