このリミット、この殻を突き破り一挙にくずして自我本来の作品に立ち戻るにはキッカケが必要で、それには心の励みが何よりの条件になるものであるのに、天来の福音をむざむざ逃して、今では福音のために却って焦りを深め、落胆をひろげ、心を虚しくしてしまった。
待合の一室に無役に紙を睨んで、然しうわべは大新聞御連載の大作家、膝下に参ずる郷里の後輩共を引見して酒、酔っ払ってむやみに威張って、おい大金がはいるんだから心配するな、むかしの三枝さんと違うんだからな、酒はどうも胃にもたれていけねえ、ウイスキーはねえか、オールドパアがいいんだ、などと泥酔して家へ帰る。
女房柳眉を逆立てて、