私は新進作家とよばれ、そのころ、全く、馬鹿げた、良い気な生活に明けくれていた。
当時の文壇は大家中堅クツワをならべ、世は不況のドン底時代で、雑誌の数が少く、原稿料を払う雑誌などいくつもないから、新人のでる余地がない。
そういう時代に、ともかく新進作家となった私は、ところが、生れて三ツほど小説を書いたばかり、私は誘われて同人雑誌にはいりはしたが、どうせ生涯落伍者だと思っており、モリエールだのボルテールだの、そんなものばかり読んでおり、自分で何を書かねばならぬか、文学者たる根柢的な意欲すらなかった。