貧乏は切ない、と言って中也は常に嘆いており、その女にありつくために、フランス語個人教授の大看板をかかげたり、けれども弟子はたった一人、四円だか五円だかの月謝で、月謝を貰うと一緒に飲みに行って足がでるので嘆いており、三百枚の翻訳料がたった三十円で嘆いており、常に嘆いていた。
彼は酒を飲む時は、どんなに酔っても必ず何本飲んだか覚えており、それはつまり、飲んだあとで遊びに行く金をチョッキリ残すためで、私が有金みんな飲んでしまうと、アンゴ、キサマは何というムダな飲み方をするのかと言って、怒ったり、恨んだりするのである。
あげくに、お人好しの中島健蔵などへ、ヤイ金をかせ、と脅迫に行くから、健蔵は中也を見ると逃げだす始末であった。