私がおかしくて仕方がなかったのは、この女は人の顔の品定めなどテンからやらぬたちなのだが、バスに乗った時に限って女車掌の品定めをして、あら、あの子、凄いシャンだ、と言う。
一向にシャンでもないから、君の会社はよっぽどデブばかり揃ってたんだな、と笑うと、この時ばかりはいささかてれて、ウームと一と唸り、メーデーだか何だかに赤旗かつぐのが羨しくてバスの車掌になったのだけれども、共産党になれと言われて、閉口したのだそうである。
まったくこの女はオッチョコチョイで、出鱈目だったが、共産党の地下運動にはカブトをぬぐ性質に相違なく、五十銭寄附したけれども、あとは降参、逃げだしたと言っていた。