戦争中、私ぐらいだらしのない男はめったになかったと思う。
今度はくるか、今度は、と赤い紙キレを覚悟していたが、とうとうそれも来ず、徴用令も出頭命令というのはきたけれども、二、三たずねられただけで、外の人達に比べると驚くほどあっさりと、おまけに「どうも御苦労様でした」と馬鹿丁寧に送りだされて終りであった。
私は戦争中は天命にまかせて何でも勝手にしろ、俺は知らんという主義であったから、徴用出頭命令という時も勝手にするがいいや何でも先様の仰有る通りに、というアッサリした考えで、身体の悪い者はこっちへ、と言われた時に丈夫そうな奴までが半分ぐらいそっちへ行ったが、私はそういうジタバタはしなかった。