私には全くこの鼻息はなかった。
私は先見の明がなかったので、尤も私は生れつき前途に計画を立てることの稀薄なたちで、現実に於て遊ぶことを事とする男であり、窮すれば通ず、というだらしない信条によって生きつづけてきたものであった。
佐々木君や荒君は思想犯で警察のブタバコ暮しを余儀なくされて出てきたばかりであったから、生きぬいて自分の世界をつくりたいという希願が激しいのは当然でもあり、荒君は「石にかじりついても」どんな卑劣な見苦しいことをしてでも必ず生き残ってみせるのだと満々たる自信をもって叫んでいた。