佐々木君や荒君は思想犯で警察のブタバコ暮しを余儀なくされて出てきたばかりであったから、生きぬいて自分の世界をつくりたいという希願が激しいのは当然でもあり、荒君は「石にかじりついても」どんな卑劣な見苦しいことをしてでも必ず生き残ってみせるのだと満々たる自信をもって叫んでいた。
荒君は元来何事によらず力みかえってしか物の言えないたちなのだが、空襲の頃から特別力みだしたのは面白い。
空襲に吠える動物の感じで、然しあんまり凄味のある猛獣ではなさそうで、取りすまして空襲を見物している私自身の方がよっぽどたちの悪い、毒性のある動物のような気がしていた。