日記に批判を与える掛りがいて、ここの追求が足りないとか、ここは正しいとか朱を入れて返すのである。
要するに潜在意識をさらけ出さしめ、それを隠すことによって精神を疲労せしめた原因を除去するのではあるまいかと私は愚考したわけだが、自分をさらけだし追求し反省するのは小説家の本道で、その意味では小説家は神経衰弱を通りこして一種の告白不感症に憑かれていると言ってよかろう。
W君の場合にしろ要するに完全な私小説を書ききれば医者も文句が言えないわけで、嘉村礒多の小説でも帝大病院へ持って行ったら医者も辟易して朱筆を投げると思うのである。