即ち、原始社会に於てはむしろ個人的対立感情は低いもので、男女関係はルーズであり、夫婦とか家庭というものもハッキリしておらず、嫉妬なども明確ではない。
文化の高まるにつれて、家庭の姿は明確となり、嫉妬だの対立競争意識というものは次第にむしろ尖鋭の度を示しているのである。
我々小説家が千年一日の如く男女関係に就て筆を弄し、軍人だの道学先生から柔弱男子などと罵られているのも、人生の問題は根本に於て個人に帰し、個人的対立の解決なくして人生の解決は有り得ないという厳たる人生の実相から眼を転ずることが出来ないからに外ならぬ。