あのときは呆れた。
私がプラットホームの反対側へ降りたわけではないので、小林秀雄が私を下ろしたのである。
だから私はもう十六、七年前のあのときから、小林秀雄が水道橋から墜落しかねない人物だということを信じてもよい根拠が与えられていたのであったが、私は全然あべこべなことを思いこんでいたのは、私が甚だ軽率な読書家で、小林の文章にだまされて心眼を狂わせていたからに外ならない。
あのときは呆れた。
私がプラットホームの反対側へ降りたわけではないので、小林秀雄が私を下ろしたのである。
だから私はもう十六、七年前のあのときから、小林秀雄が水道橋から墜落しかねない人物だということを信じてもよい根拠が与えられていたのであったが、私は全然あべこべなことを思いこんでいたのは、私が甚だ軽率な読書家で、小林の文章にだまされて心眼を狂わせていたからに外ならない。