目が醒めて、夜が明けてるのに、汁の煙も、漬物の香も、いっこう連想に乗って来ないからは、行きなり放題に、今日は今日の命を取り留めて、その日その日の魂の供養をする呑気屋で、世の中にあしたと云うものがないのを当り前と考えるほどに不幸なまた幸な人間である。
自分は十九年来始めて、こう云う人間と一つ所に泊って、これからまたいっしょに歩き出すんだなと思った。
赤毛布と小僧の顔色を伺って見ると少しも朝飯を予期している様子がないんで、双方共朝飯を食い慣けていない一種の人類だと勘づいて見ると、自分の運命は坑夫にならない先から、もう、坑夫以下に摺り落ちていたと云う事が分った。