然しながら、作品に就いて目的を定め計画を案じ熟慮専念する時間がなくとも、少くとも小説作者の場合に於いては、一応人間に通じていることは絶対の条件であり、人間通の裏附は自我の省察で保たれるもの、そして常に一つの作品を書き終ったところから、新らたに出発するものだ。
一つの作品は発見創造と同時に限界をもたらすから、作家はそこにふみとどまってはいられず、不満と自己叛逆を起す。
ふみとどまった時には作家活動は終りであり、制作の途中に於いても作家をして没頭せしめる力は限界をふみこし発見に自ら驚くことの新鮮なたのしさによる。