凡そ心も精神もなしに、あの警句とこの警句との、ほんの語義的な調停を事としてゐて、それで批評だの学問だのと心得てゐる奴が斯くも多いといふことは、抑々、自分の心が要求しはしなかつた学問を、本屋に行けば本があつたからしたんでさうなつたんだ。
「やつぱり朝はおみおつけがどうしたつて要りますなあ」だの、「扇子といふやつはよく置忘れる代物ですなあ」とか云つてれあともかく活々してる奴等が、現代だの犯罪心理なぞとホザき出すので、通りすがりに結婚を申込まれた処女みたいなもんで、私は慌ててしまふんだ。
大学の哲学科第一年生――なんて、「これは深刻なんだぞオ」といふ言葉を片時も離さないで、カントだのヘーゲルなぞといふのを読んでゐる。